2014年10月28日火曜日

世界遺産バルバロ邸

イタリア・マゼールに建つ世界遺産バルバロ邸を見学しました。現在の所有者Diamante
Dalle 夫人が特別にご案内してくださるというので、緊張して訪れました。ミラノを出発したのがお昼過ぎ、マゼールまで途中休憩もせず車でひたすら走り続けましたが、
約束の時間よりずーっと遅れて、到着は日も暮れかかった4時過ぎになっていました。
裏門の呼び鈴をならすと牛のように大きな猟犬が4~5匹と小さな犬が5~6匹不思議な鳴き声をあげて屋敷の陰から走って出迎えてくれました。下僕といった風貌の青年が門扉を開けて、邸内に案内してくれました。まるでタイムスリップしてルネッサンス時代のヴィラにやってきたような感じがしました。この屋敷が建てられた16世紀の情景とほとんど変わらない景色が目の前に広がっていました。

Diamante Dalle 夫人のご主人は昔、日本にいたことがあり
黒沢明監督の助手を務めていたそうです。



しばらくするとDiamante 夫人があらわれました。イタリアは現在は共和国ですが
彼女は先祖の爵位を冠して伯爵夫人と呼ばれていると聞いていましたので、普段でも
淡い色のカシミアのセーターに真珠のネックレスを身に着け、髪は輝くような銀髪で
美しく結い上げられているというような姿を想像していました。
あらわれた伯爵夫人は長い白髪まじりの灰色の髪を無造作にゴムでまとめ、ジャージーの
上下同色のスエットといったいでたちでした。
あまりにも想像していた様子と違っていましたので最初は驚きましたが、お顔立ちや物腰の
上品な方で気取ったところのない感じのよいご婦人でした。
私は訪問が遅くなったので、伯爵夫人はお昼寝をなさっていらしたのかと思いましたが
ご紹介くださったエマさんに言わせると、いつもこのようないでたちだそうです。

稼業のワインづくりで、お忙しくいつも広いワイン畑を見回っているそうです。

室内はヴェロネーゼの壁画で美しく飾られていました。思わず息を呑み込むような
美しい絵です。この世にこれほど美しいものがあるなんて・・・・・ヴェロネーゼの
素晴らしい作品を目の当たりにしている幸福と感激で胸が高鳴りました。
今でも目をつむるとあのヴェロネーゼの絵がよみがえってきます。







2014年10月21日火曜日

アメリカ国連大使公邸 inウォルドルフアステリア・ホテル

先日、中国企業、安保保険がニューヨークのウォルドルフアステリア・ホテルを
買収というニュースが耳にはいってきました。
とても驚きました。なぜなら、
ウォールドルフアステリア・ホテルの最上階には
アメリカ合衆国全権国連大使の公邸があるからです。

アメリカ政府がホテルから借り上げて国連大使公邸として利用しているのです。
セキュリティの問題はどうなるのでしょうか?

そのうち、アメリカ政府は他の場所に国連大使公邸を移すのではないでしょうか



この写真は、副大統領候補として名が挙がったこともある政治家ビル・リチャードソン氏が
国連大使だった1997年に大使公邸で
撮った写真です。真ん中の人物がリチャードソン氏です。

背景にはジャスパー・ジョーンズの代表作星条旗の絵が
飾られています。この絵は「エンカウスティーク」という古代の
絵画技法で描かれています。
いかにもアメリカ国連大使公邸らしいと思いました。この部屋は、
シンプルな白い壁で何の変哲もないインテリアでしたが
トイレが一風かわっていました

アメリカの新聞に記載されたリチャードソン氏の戯画が
個室、壁面一杯に飾られているのです。
面白くて全部見たかったのですが
あまり長居をするわけにはいかずちらっと見ただけでした。
いかにもリチャードソン氏らしいアイディアと思いました。

トイレはちょっとした工夫でインテリアをたのしめる空間ですね。

ウインザー公とシンプソン夫人が,以前住んでいたと
聞いた記憶があります。英国アダムズ様式風
美しいティー・サロンもありました。その室内装飾は当時からのものでしょうか?
壁面はペパーミント色の無地の塗装とストライプ柄の壁紙が貼られたパネルで覆われ、寄木細工の美しいコモードがおかれていました。
中国風の陶磁器の花瓶も写真にうつています。
とても上品な室内装飾でした。


2014年10月16日木曜日

アンダーズ東京見学

2014年10月10日アンダーズ東京を見学しました。



一泊100万円という200㎡のスイート・ルームliving supaceには
オフホワイト色の革のソファーにフロアースタンド
アルコが置かれていました。やさしい曲線にモダンな和のテーストが感じられます。



床のカーペットの若草色は畳の色をイメージしたそうです。台湾出身でニューヨークに拠点をおいてグローバルな活躍をしているトニー・チー氏がインテリアを担当。木を贅沢に使かい、忙しい現代人がリラックスできるスペースを演出。窓からは東京湾や東京タワーが一望。夜景はさぞかし美しいことでしょう。

2014年10月7日火曜日

ヨーロッパ室内装飾初体験(1)

私はカルチャー・サロンを主宰して「ヨーロッパ室内装飾&家具の歴史」を
教えていますので、豪華なアンティーク家具に囲まれて暮らしていると
誤解されることがあります(笑)

勿論自分の住まいのインテリア・デザインにはこだわりは持っていますが、
色々と制限のある中で暮らしているので残念ながらなかなか思った通りの住まいに
暮らすと言うわけにはいきません。(笑)

まず最初に私がインテリアに関心をもった原点

英国で受けたカルチャー・ショックについてふれてみたいと思います。


1970年代初め、私は英国バークシャーにある全寮制のPadworth college で英語を学んでいました。当時は女子校でした。

海外からの留学生が英国の大学に入学するためのケンブリッジ英検コースを設けていました。

バークシャーは英国のもっとも美しい田園風景が見られるところだそうです。

そんな田園風景の広がる丘の上にPadworth College は建っていました。


古いマナーハウス(領主の館)が校舎です。

遠くから見るとまるで絵のように美しいマナーハウスなのですが
実際は古びてメィンテナンスが行き届かず、天井には蜘蛛の巣が張られ
想像していた様子とは大分ちがっていました。(つづく)


2014年10月6日月曜日

ヨーロッパ室内装飾初体験(2)

くじ運の悪い私が引き当てたのは
3階の小窓のついた殺風景な屋根裏部屋。
もっとましな部屋は2階にありました。
大きな窓にタータン・チェック柄のカーテンが掛けられ
暖炉があり、壁面には彫刻が施されている木のパネルが貼られています。
(この部屋は日本でみた学校案内のパンフレットに記載されていました)
もっとひどい部屋もありました。厩舎を改造した部屋です。
小窓のついたうなぎの寝床のような部屋です。

なんかひどい所に来てしまった。
修道院に入れられたみたいというのが私の第一印象でした。

陸の中の孤島という感じです。
交通手段は週末のみ運転される小型スクールバスだけ。

生活必需品は週1回ラウンジの片隅でjenniferという中年女性が売店を開く時のみ買えます。


Jenniferはいつもすっぴんのおかっぱ頭、手の爪は真っ黒で
頬にはすすがついていたりしています。何気なく羽織っているカーディガンは
ほころびて穴が開いています。彼女の仕事は売店を開く他に
週末のスクール・バスの運転。
留学生達を遠足に連れて行くこと。希望者に乗馬のレッスンをすることなどです。


学校の関係者は校長先生をはじめ、全員学校の敷地内に住んでいました。Jenniferもそうでした。

Jenniferの話方や態度はなぜかとても尊大なのです。
彼女の英語はクイーンズ・イングリッシュという
噂もありました。
それでも不思議といやな感じはしないのです。
それどころか、人間的なあたたかさが感じられるのです。
校長先生ご夫妻からも一目おかれている存在でした。
生徒からはとても慕われていました。

私も彼女が大好きでした。

何しろお話がとても面白いのです。
宮殿のパーティや舞踏会、foxhunting,アフリカやインドでの狩猟とか
彼女の仕事や身なりからは想像もつかない内容なのですから
私は最初、少々虚言癖があるのかと思っていました。

ある日bridge(カードゲーム)を教えてくれるという事で
彼女の居室に招かれました。

彼女が校内のどこに住んでいるのかそれまで私は知りませんでした。
食堂の横が彼女の居室でした。(つづく)

2014年10月5日日曜日

ヨーロッパ室内装飾初体験(3)

食堂の壁面と一体化しているような目立たない扉があります。
の重い扉を押すとドアーは開かれ、目に飛び込んできた光景はまったく別世界。

眩しいほど豪華な装飾がほどこされた貴族のサロンといったお部屋に
Jenniferが泰然とソファーにこしかけ、私達に微笑みかけていました。足元にセントバーナード犬が
うやうやしく(?)控えていました。

当時の私は室内装飾の知識など皆無でしたから、何様式なのか
一体いつの時代様式なのかはわかりませんでしたが、目にはっきりと
その時の部屋の情景が焼き付けられています。

壁面にはえんじ色のダマスク織り絹の布地が張り巡らされ
金の額縁に収まった先祖の肖像が何枚も飾られていました。

窓には壁と同じ色柄の絹のダマスク織りのドレープが
かけられ、カーテンボックスも同じ色柄のダマスク織りでくるまれ
ていました。カーテンボックスにはアクセントに金のブレードが
つけられ、タッセルも金糸でつくられていました。

ソファーやアームチェアーはチッペンデール・スタイル
カーペットはペルシャ絨毯

今考えると、良くわかるのですが、
そのインテリアは典型的な18世紀のジョージアン様式でした。




写真がないのでそのお部屋をおみせできませんが、似たような写真をイメージ写真として掲載します。

一つ古めかしい木彫りの椅子がありました。それは国王ジョージ1世だったか?2世から賜った椅子だそうです。当時の私には国王ジョージ1世なのか何世なのかよくわかりませんでした。今、もう一度訪れてその椅子を見てみたいです。



でもJenifferは2010年に75歳でアイルランドで亡くなっています。
彼女はLady のタイトルを持つ、Lady Jennifer Bernard。
padworth college の大家さんでした。
アイルランド出身の貴族。第5代目Bandon 伯爵の長女です。
彼女の死をネットの英国ニュースで知った時、懐かしい思い出が
走馬灯のようにぐるぐる頭のなかを回って甦ってきました。
もう1度Jnniferに会いたいと心の底から思いました。